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レザークラフト

2022.02.03

「がばっと開いて小銭の見やすい長財布」について②

つづきです。

僕がラウンドファスナーでもっとも失敗する工程はまとめ縫いだと書きました。

ではまとめ縫いのどこで失敗しているかというと90%がマチの部分です。

マチとはどこかというと…。

このワイン色の部分がマチです。

この部分は基本的なラウンドファスナーの場合、革が一番厚く重なっているところになります。

通常だと少なくても4,5枚は重なります。

分厚くなりがちで縫いにくく、マチの段差とカーブが重なって、針が落ちたり縫いずれしたり縫い目が乱れたり…。

これを改善すればあれで失敗し、次こそ万全の態勢で挑んだはずがまた別のミスをする。

自慢ではありませんが写真は全部失敗作です。探せばもっとあります。一個作るのに4時間くらいかかるので、何時間が無駄になったのか考えたくないです(笑)

最初の写真に戻りますが、これは「がばっと開いて小銭の見やすい長財布」の製作途中のものです。

マチを失敗するなら、その原因を取り除いた構造で作ればいい。

そう考えて設計しました。

マチへ差し掛かる革の厚みの段差、ここがもっともミスの多い場所です。

カード入れ部を工夫し、マチ一枚のみの段差とすることで、革の重なりも最大3枚となりました。

とてもミシン縫いしやすくなり、ミスも減りました(ミスがなくなったとはいっていない)。

がばっと開く小銭入れ部分の仕切りも、ミシン押さえが通るギリギリで設計してあります。

革の重なりを減らすことは構造を単純にすることであり、副次的効果として革パーツの使用量を減らすことができています。

外装1枚、内装に小銭入れ部分とマチ2枚、カードスロット付きの内装土台。

合計5パーツでできています。

(カードの受けとして内部に布パーツは8枚ほど入っています)

苦手なラウンドファスナー長財布を作れる形に変えたい」というアイデアは、「どこにもない形のラウンドファスナー長財布の誕生」につながりました。

これだとまるで作り手の欲望を押し付けたような商品の誕生に見えますが、次回は「使い手」視線でのアイデアからのアプローチをお伝えしたいと思います。

たぶん次回へつづく…。